相続と遺産分割

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遺産分割詳細

遺産分割とは、被相続人が死亡時に有していた財産、すなわち個々の遺産につき、権利者を確定させる手続です。

共同相続の場合、遺産が法定相続分に従って複数の相続人の共有になっているので、個々の遺産をある相続人の単独所有にするなど、終局的な帰属を確定するための手続きです。


1.遺産分割の対象となる財産遺産分割の対象となる財産

遺産分割の対象となる遺産とは、①「相続開始時に存在」し、②「分割時にも存在」する③「未分割」の財産をいいます。

従って被相続人の死亡の前後に一部相続人が被相続人の預金を引き出してしまったような場合、その預金は原則遺産分割の対象にならず、不法行為や不当利得等の別訴により処理されることになります。

また、有効な遺言により遺贈等された財産も、原告遺産分割の対象にはなりません。ただし、遺留分を侵害する遺言については、後述の遺留分減殺の調停等により紛争の解決が図られることになります。


2.遺産分割の手段遺産分割の手段

(1)遺産分割協議

共同相続人全員の話し合いによる遺産分割の方法です。全員が一同に会さなくても、電話、メール等による持ち回り協議も可能です。

不動産の登記等のためにも、相続人全員が実印を押捺した遺産分割協議書の作成と印鑑登録証明書の添付が必要です。

なお、当事者同士のお話し合いが難航したような場合には当所弁護士を代理人にして交渉することも可能ですし、遺産が複雑で多岐にわたるような場合は、後々のためにも協議の当初から弁護士を代理人としてつけることをお勧めします。

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(2)遺産分割調停

共同相続人間で遺産分割協議が整わなかった場合、家庭裁判所に調停を申立てることにより解決が図られることになります(民法907条)。直ちに審判を申立てることも可能ですが、調停に回付されることが多いので、まずは調停を起こすことが通例です。

管轄は相手方の住所地の家庭裁判所で、裁判所を当事者の合意で定めることも可能です。必要書類としては共同相続人の戸籍謄本や住民票の他、被相続人の出生から死亡までの戸籍や遺産目録等があげられます。

調停は申立人及び相手方が通常2名の調停委員と交互に話をする形で進められ、重要な期日では担当裁判官(家事調停官)が同席することもあります。

合意が成立すると遺産分割の内容が調停調書に記載され、確定判決と同一の効力を有することになり、合意が不成立の場合は自動的に遺産分割審判に移行します。

調停は当事者の出席が原則で、ご本人でも申立をすることが可能ですが、相続分や寄与分、特別受益などの法的内容を期を逃さずに主張、立証していくためにも、法的な問題がある場合の他、遺産が多岐にわたる場合や相続人間の対立が激しい場合にも、弁護士を代理人に立て事案を十分整理しながら調停を申立てる必要があります。

(3)遺産分割審判

協議でも調停でも合意が成立しなかった場合の最終的な遺産分割の方法で、家庭裁判所による裁判、すなわち審判により遺産分割の内容が決定されます。

申立人及び相手方の主張・立証に基づき、審判官も当事者の尋問や調査官による調査等を行い、法的に適正な内容の遺産分割を決定します。

審判書には強制力(執行力)があり、不服がある場合には2週間以内に即時抗告を申し立てることができます。

審判は裁判の一種ですので、少しでも有利な審判を得るためには必ず弁護士を代理人に立てて法的に有効な主張・立証をしていく必要があります。

また共同相続人の一人が遺産の一部を使い込んでしまっている場合など、遺産の保金の必要性がある場合には、審判と同時に審判前の保金処分を申立てることも可能です。


3.遺産分割の方法遺産分割の方法

(1)現物分割

相続分に応じて共有状態にある複数の不動産の内、いずれかをある相続人の単独所有にし、いずれかを他の相続人の単独所有にするなど、遺産を現物のまま相続人間に分配する方法で、最も原則的な分割方法です。

しかし、現物分割は遺産が複数ある場合でなければ実現不可能なため、他の分割方法と組み合わせて用いられることが多いのが実情です。

(2)代償分割

不動産が1つしかないとか、現物分割すると価値を損なうなど、現物分割が相当でない「特別の事由」がある時に、特定の相続人に法定分以上の財産を相続させた上で、他の相続人に「代償金」を支払わせる形の分割方法です。

要件として上記「特別の事由」の他に、相続人に代償金を支払う資力があることが必要とされます。

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(3)換価分割

現物分割も代償分割もできない場合に、遺産を売却して換価し、売買代金を分配する方法の分割です。

共同相続人間の合意があれば、任意売却の方が高額での迅速な売却が見込まれますが、条件等につき合意ができなければ競売によって換価し、競売代金を分配することになります。


4.相続人と相続分相続人と相続分

(1)相続人の範囲

相続人には血族相続人と配偶者があり、血族相続人は①子(死亡時は孫、ひ孫等)、②父母(死亡時は祖父母等)③兄弟姉妹という順位に従い、より上位の者が相続人になります。

そして配偶者は血族相続人と共に常に相続人になります(民法887条から890条)。

(2)代襲相続

被相続人より先に血族相続人が死亡した場合に血族相続人の子が代わって相続人になることを代襲相続といいます。

子に関しては孫やひ孫の先まで代襲相続が認められますが、兄弟姉妹についてはその子である甥、姪までしか代襲相続は認められません。

(3)法定相続分

共同相続人間の法定相続分は下記の通りです(民法900条)。

①直系卑属(子や孫)と配偶者が相続人の場合は各2分の1ずつ。
②直系尊属(父母や祖父母)と配偶者が相続人の場合は、直系尊属が3分の1、配偶者が3分の2。
③兄弟姉妹(又は甥・姪)と配偶者が相続人の場合は、兄弟姉妹(又は甥・姪)が4分の1、配偶者が4分の3。

なお、血族相続人が複数いる場合は上記相続分を頭数で割ったものが、各相続人の相続分になります。


5.遺産の範囲と評価遺産の範囲と評価

(1)注意点

一見遺産のように思える財産でも、下記のように遺産分割の対象にならない財産もありますので、注意が必要です。

(2)預貯金

判例は、預貯金等の金銭債権は、遺産分割を待つまでもなく、相続開始と共に各相続人に法定相続分に応じて当然に分割帰属すると判示しています。

しかし銀行実務ではこの判断とは異なり、預金の引出しには共同相続人全員の同意を要求しているため、調停・審判上も預貯金を遺産分割の対象として扱うのが通例です。

なお、被相続人と同居していた相続人が被相続人の死亡の前後にカードを利用して預金を引き出してしまったような場合、その金額は原則遺産分割の対象とならず、不法行為に基づく損害賠償請求等の民事上の別訴訟で解決が図られることになります。

(3)不動産の賃料

判例は不動産の賃料も預金同様の金銭債権として、相続開始後遺産分割までの分については、分割による不動産の取得者によらず、各相続人が法定相続分に応じ分割して取得するものとしています。

従って相続人全員の同意がない限り遺産分割の対象にはならず、使い込みの問題等については民事訴訟で処理されることになります。

(4)生命保険金

被相続人の生命保険金についてですが、保険金受取人として特定の相続人が指定されている場合、生命保険金は保険契約と同時にその相続人の固有財産となり、被相続人の遺産から離脱していると判例が判旨するように遺産には該当しません。

これは保険金受取人が「相続人」と抽象的に指定されている場合も同様で、各相続人は法定相続分に応じた遺産外の金銭債権として生命保険金請求権を有していることになります。

結局生命保険金が遺産になるのは、被相続人が自身を保険金受取人として指定している例外的な場合に限られます。

(5)死亡退職金

死亡退職金が遺産に含まれるかは、支給規定の内容、支給慣行や支給経緯等を勘案し、具体的事案に応じて個別に判断していくべきものとされています。

但し、国家公務員の死亡退職手当等、規定の趣旨が遺族の生活保障を目的としたものと考えられる場合は、受給権者が固有の権利として取得したものとして遺産性が否定されることになります。

(6)金銭債務・葬儀費用

金銭債務は相続により各相続人に法定相続分で承継され遺産分割の対象にはなりません。

また、葬儀費用は相続開始後に生じた債務の上、一時的には祭祀主宰者が負担すべきなので、やはり相続財産とは言えません。

香典から香典返しの金額を引いた残余を充てても不足する分の葬儀費用が問題になることが実務では多く、調停内で調整できない場合は、別途民事訴訟で解決が図られることになります。


6.遺産の評価遺産の評価

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(1)評価時期

特別受益や寄与分によって法定相続分を修正して具体的相続分を算定する場合、それらを「相続開始時」を基準に評価し直して算定することになります(民法903条、904条)。

一方、現実に遺産を分割する場合の評価については、相続開始後遺産分割時までの価値の変動による不公平を防ぐため、「遺産分割時」を基準に評価するのが通説判例です。

(2)評価方法

遺産の評価で特に争いになりやすいのが、土地建物等の不動産の評価です。

評価方法としては公示価格、固定資産税評価額、路線価額(相続税評価額)等があり、これらを参考に当事者間での合意が図られることになります。

しかし評価額に争いがあって合意できない場合は、不動産鑑定士による鑑定が行われることになります。


7.特別受益特別受益

(1)総論

共同相続人中に被相続人の生前に贈与を受けたり、遺贈を受けたりした者がいた場合、この相続人が他の相続人と同じ相続分を受けるとすれば不公平になるので、共同相続人間の公平を目的にして、特別な贈与を相続分の前渡しとみて、それを相続財産に持ち戻した上で(みなし相続財産)、相続分を算定するのが特別受益の制度です(民法903条)。

ただし被相続人が持戻義務を免除した場合には、その相続人は遺留分に反しない限りで持戻義務を負わないとされています。

(2)範囲

特別受益の範囲は、共同相続人が遺言で受けた贈与(遺贈)と、婚姻・養子縁組のため、又は生計の資本として受けた生前贈与に限定されます。

遺贈については、「相続させる」旨の遺言の場合も同様に扱われます。

婚姻・養子縁組のための贈与としては、持参金・支度金等が一般的にこれにあたりますが、価格が少額で親の子に対する扶養の一部と認められる場合には特別受益にならず、結納金・挙式費用は一般的に特別受益にならないとされています。

生計の資本としての贈与は、通常独立のための資金援助とされており、居住用不動産の贈与や事業資金の贈与がその代表例です。学費については私立医大の入学金のように特別多額のものでない限り、親の子に対する扶養義務の履行とされ、特別受益にはならないのが通例です。

(3)生命保険金・死亡退職金

前述の通り、生命保険金・死亡退職金は相続財産には該当せず、原則として特別受益の対象にもなりません。

しかし、生命保険金の額が遺産に比べて相当大きい場合など、受取人と他の相続人間の不公平が、民法903条の趣旨から到底是認できないほど著しい特段の事由がある場合には、同条の類推適用により特別受益に準じて持戻の対象とするのが、判例の立場です。

なお、死亡退職金については、受給権者の生活保障を目的とした制度に基づいて支給されたもので、生命保険とは性質を異にするため、上記判例の趣旨は及ばず、結局持戻の対象とすべきではないというのが実務の考え方のようです。


8.寄与分寄与分

(1)総論

共同相続人中に被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした者がいる時に、相続財産から寄与分を控除した上で(みなし相続財産)、相続分を算定し、それに寄与分を加えた額を寄与者の相続分とすることで、共同相続人間の実質的な公平を図る制度(民法904条の2)です。

(2)要件

寄与分の要件としては、①相続人自らの②特別の寄与があり、③それによって被相続人の遺産が維持又は増加したことが必要です。

相続人の配偶者や子による寄与については、「相続人の寄与と同視できる」ような特別な場合しか認められません。

また、「身分関係に基づいて通常期待される程度を超える貢献」をする必要があり、夫婦間の協力扶助義務や親族間の扶養・互助義務の範囲内の行為は特別の寄与にはあたりません。

また寄与は精神的な援助では足りず、積極財産の減少防止又は増加、債務の増加防止又は減少といった財産上の効果があり、さらにそれと寄与の間に因果関係があることも必要です。

(3)態様

寄与行為の態様としては、
①家事従業型
②金銭等出資型
③療養看護型
④扶養型
⑤財産管理型
の主に5つがあげられます。

それぞれの類型に応じて必要性、特別性、無償性、継続性や専従性の要件が要求されます。

このうち、特に争いになりやすいのが療養看護型ですが、単に被相続人と同居して家事の援助を行っている程度では寄与分は認められません。

看護師や介護士がすべき特別の看護を相続人が継続して行っているような場合に、その看護費に基づいた相当額が、寄与分として認められるのが通例です。


9.民事訴訟等との関係民事訴訟等との関係

(1)遺言の効力に争いがある場合

前述の通り、有効な遺言により遺贈等された財産は遺産分割の対象にはなりません。

しかし遺言が偽造だと主張されたり、趣旨不明だったりするなど、遺言の有効性や解釈に争いがあって合意できない場合は、遺産分割の協議や調停に先立って、まず遺言の無効確認等の民事訴訟で遺言の有効性や解釈の判断について確定する必要がありますので、このようなケースでは早目に当所にご相談されることをお勧めします。

(2)使途不明金の問題

遺産分割でよく問題になるのが「被相続人と同居していた、相続人が、被相続人の預金を無断で引き出してしまっていて他にも遺産があるはずだ」という主張が一部の相続人からなされるケースです。

先にも述べた通り、遺産分割の対象になるのは「相続開始時」かつ「遺産分割時」に存在する財産ですので、かかる使途不明金については無断引出の時期が被相続人の死亡の前後を問わず、原則遺産分割調停の対象とはならず、相続人間で無断引出額が合意できた場合のみ「遺産の先取り」として調停内での処理が可能です。

合意ができない場合、使途不明金については一部相続人の無断引出行為を不法行為又は不当利得と構成し、損害賠償請求という民事訴訟により解決が図られることになります。

以上、遺産分割と一口に言っても様々なケースがあり、複雑な法的問題も多いため、早期解決のためにはなるべく早い段階での当所弁護士へのご相談をお勧めします。



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